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三海域イニシアティブ(3SI)の資本市場の活用に向けて

30.12.2021

マレック・ディエトル ワルシャワ証券取引所代表取締役社長 EUには、急速な経済発展を遂げている地域が二つあります。西のアイルランドと東の三海域イニシアティブ12カ国です。三海域イニシアティブ12カ国は、EU加盟以来、年2,8%の経済成長率を維持しています。現状、世界の投資家はこの地域の持つ可能性を十分に活かせていません。

マレック・ディエトル ワルシャワ証券取引所代表取締役社長

経済動向を特段に注視していなくとも、経済成長率と株価の間に相関関係があることは明らかです。この関係について解明しようとする多くの論文が発表されていますが、今だ資本市場が発展を牽引するのか、経済成長の結果として株式市場が強くなるのかは明らかになっていません。最も確かなことは、この相関関係がフィードバックの一種であるということです。公開資本市場は貯蓄を投資に回す上で最も効率的ですが、リターンが期待できてはじめて投資の意味があります。リターンの有無は経済成長と結びついています。

欧州経済領域(EEA)参加国における一人当たりGDPと、GDPに対する上場企業株式時価総額の割合との関係を見ると、「豊かな」国ほど資本市場も「大きい」ことは明らかです。三海域イニシアティブ諸国では、経済成長のレベルに資本市場の発展が追い付いていません。

出典: FESE CEIC Data、各証券取引所、世界銀行

 

急速な発展を遂げるとともに、GDPに比較して資本市場も発達している国がポーランドです。ポーランドのGDP は直近30年間で3倍以上になりました。このことは年間の実質経済成長率の平均が4%であったことを意味します。もちろん、名目経済成長率は更に高く、年間11,5%以上になります。更に主な株価指数であるWIG(ワルシャワ証券取引所指数)はこの30年間で平均15%伸びており、ここに成功の秘訣があります。ワルシャワ証券取引所には 「国内平均」を上回る成長企業が上場しています。このため投資家が集まり、この投資家の存在が優良企業の新規上場を招く構造となっています。

ポーランドの資本市場は明らかに成功しているとはいえ、未だ大幅な成長の余地を残しています。GDP総額に占める株式時価総額の割合は30%から40%を推移しています。これは、いわゆる古くからのEU諸国の半分の値です。他の三海域イニシアティブ諸国に関しては、更に大きな成長が期待できます。オーストリアとポーランドを除く三海域イニシアティブ諸国では、この30年間の目覚しい経済成長にも関わらず、GDPに占める時価総額の割合は15%から20%に過ぎません。

三海域イニシアティブの証券取引所の上場企業がいかに成長目覚しくとも、投資家の募集、更なる企業の新規上場となると、規模の経済性による障壁に直面してしまいます。三海域イニシアティブの株式取引の約85%が上位三市場で占められていることからも、市場間の緊密な協力が欠かせないことは明らかです。世界的投資家を対象とした共通の投資先を構築することで、成長企業が制約を受けることのない資本を地域内で調達することができるようになります。

 

出典: FESE、各証券取引所

 

 

 

三海域イニシアティブ証券取引所における株式取引額(ポーランド:57,3%、オーストリア:28,1%、ハンガリー:7,7%)

出典: FESE、各証券取引所

 

そうした協力の一例が、2019年に公開された三海域イニシアティブ地域の7カ国(ポーランド、クロアチア、チェコ、ルーマニア、スロバキア、スロベニア、ハンガリー)の市場に上場する153銘柄で構成されるCEEplus インデックス・ファンドです。注目の国と業種を網羅した当インデックス・ファンドは世界中の投資家の関心を集めています。

インデックスの公開に加え、マーケティング活動を共同で行うとともに、資本市場に関するEUの規制に対しても共通の立場を表明しています。これまで、交渉で優位に立つのは常に強者であり、欧州委員会の提案の中には、大手以外を一掃しかねないものがありました。

ワルシャワ証券取引所にとって極めて重要なのは、技術面における協力です。既に域内の多数の証券取引所において、私たちが開発したソリューションの試運転が行われています。今後、小規模証券取引所のニーズにマッチした取引システムを輸出することで、欧州の当地域の資本市場に、技術的に統一されたエコシステムを構築することが可能になります。

知見を共有するプラットフォームとしては、ワルシャワ証券取引所が主催する三海域イニシアティブ証券取引所会議があげられます。今年は、ブルガリアおよびオーストリアの証券取引所が初参加するとともに、域外からもアルメニア、ギリシャ、ジョージアが参加します。

ワルシャワ証券取引所は今や、当地域の押しも押されもせぬリーダーです。20年前、アテネ証券取引所は時価総額でワルシャワ証券取引所の4倍、取引高では2倍の規模でした。今日、ワルシャワ証券取引所はギリシャの4倍の規模に成長しています。急成長を遂げる中で、ポーランドは資本市場の発展に欠かせないノウハウを培ってきました。地域を牽引する存在になったということは、優位性を意味するのではなく、地域の資本市場全体の発展に対して責任を負っているということです。

三海域イニシアティブは、長年おろそかにされてきた南北を結ぶ交通・輸送インフラ等の接続ネットワークの拡充を目的に発足しました。その課程で、資本市場も同様の状況にあることに気付いたのです。当地域の各証券取引所と西側の主要市場間には様々な協力が行われているにも関わらず、域内の南北間の関係は極めて希薄でした。

時は来たれり資本調達を必要とする当地域の何千もの企業、資産を増やす機会を探っている投資家の方々のために、この状況を打破する時が来ました。ワルシャワ証券取引所は地域のリーダーとして、思慮深く、かつ大胆にこの課題に取り組みます。

マレック・ディエトル(ワルシャワ証券取引所代表取締役社長)

 

本記事は、ワルシャワ証券取引所との共同プロジェクトの一環として、ポーランドの月刊誌「Wszystko Co Najważniejsze 」に同時掲載されました。

 

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