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ポーランド・ニューディール政策

13.07.2021

パンデミック後の時間(とき)を、ポーランドは経済・社会システムの再構築に活用する――それが次の危機に対してより耐性があり、より公正で、私たちが発展の新しいレベルに上るのを可能にするものになるためにである-マテウシュ・モラヴィエツキ ポーランド共和国首相。

Mateusz Morawiecki

私たちは驚くべき時代を生きています。最近1年数か月は健康と生命の恐れ、さらには将来に関する不安という特徴を持ちながら、過ぎ去りました。多くのポーランド人は自らに、コロナウイルスを避けることができるか、と問うただけでなく、今後も仕事を維持できるのか、家族は確実な経済的安定を持てるのか、また子どもたちはよりよい将来への期待と決別しなくてもよいのか、と問いました。

新型コロナウイルスというパンデミックは、本当に、私たちの発展を1990年代にまで引き戻しかねないものでした。いくつかの国々――ヨーロッパの国々でもかまいません――の悲惨な経済統計を一瞥するだけで、黒いシナリオが単なるパニック映画の空想でなかったことがわかるでしょう。しかし、私たちの国はそうはならず、それは、今日、1990年代とは正反対に、ポーランド人が、援助の組織化をそれを必要とするすべての人々に対して積極的に開始する、国に頼ることができたからなのです。「危機に立ち向かう盾」と「金融の盾」の一環としての先例を見ない支援は、私たちがコロナウイルス(COVID-19)の危機的影響を押し止め、2020年の国内総生産低下を3パーセント以下に抑えることを可能にしました――これはヨーロッパで3番目に良好な結果であり、人口1千万人以上の大国のグループ中では競争相手がいないほど良好な結果でした。さらなる大成功だったのは、失業率を3パーセント前後に押しとどめたことです――ここにおいて、私たちは欧州連合の中で、まさしく絶対的に最良の結果を収めました。

次のデータは、危機的条件下で、ポーランド経済が本当に好調であることを裏付けるものばかりです。2021年3月の輸出高1,100億ズウォティ超は、歴代最高記録です。3月にはPMI(購買担当者景気指数)指標が57ポイントを超えました――これもまた当指標の計測史上、最良の結果です。数か月前に欧州委員会が示したところでは、ポーランドは短・長期間において、公共財務が確実な安定性を有している、欧州連合中わずか4か国のうちの一つです。こうした状況下で犯すことができる過ちはたった一つ、万事良い方向に向かっている、行動を起こす必要はない、と認めてしまうことです。

危機――好機か、はたまた惨事か?

危機から結論を導き出さないこと、これこそ惨事である。しかし、正しく読み解かれ理解された危機は、好機であるだけでなく変化の加速装置である――ポーランド・ニューディール政策の根底にある考え方を2文で要約するとこうなります。

今日の危機の例外性は、教科書中にそのための解決をいくら探しても見つからないことにあります。ハイエクの本に探そうが、ラサールの本に探そうが同じことです――どのような経済危機理論であろうと、ほとんど全世界における経済社会活動の麻痺が日を追うことに強化するような状況は予想していませんでした。

COVID-19の危機に対して、私たちは、医師たちがコロナウイルスそのものと戦っているのと、同じように立ち向かわなくてはなりません。具体的な治療薬はありませんが、経験が症状に対応するよう指示します。歴史的な経験は私たちに、危機に対する答えは国の活動の増大化でなければならないということを教えています――それが何に及ぶものであろうとも、危機は管理しなくてはならないものであり、なすがままにしてはならないからです。

1933年に米国大統領フランクリン・D・ルーズベルトはニューディール政策を発表しました――経済恐慌への答えであり、経済の活性化、対外貿易の活発化、そして巨大な公共投資(12万個の公共建築と7万7000の橋梁が建設されました)に基づく改革プログラムです。続く10年間で米国を、高速道路網が縦横に縫いました。これこそ、今日のポーランドにとって、ヒントとなるシナリオです。

ポーランド・ニューディール政策、または新しい質

ポーランド・ニューディールのねらいは、パンデミック後の復興だけに及ぶのではなく、ポーランドの経済社会システムの再建に及んでいます――それが次の危機的瞬間により耐性を持つように、より公正であるように、そして同時にポーランドが新しい発展レベルに上ることを可能にするためにです。

パンデミックの病理診断は、保健行政の状態から始めなければなりませんでした。コロナウイルスは、すべての国――最も豊かな国ですら――の保健システムを崩壊の瀬戸際に追いやりました。ポーランドでも、それと異なっていたわけではありません。仮に断固たる制限政策がなく、極めて急速に行われた臨時病院網の建設がなければ、私たちの国においても、疫病による惨事が発生していたことでしょう。仮に私たちがそれ以前に、保健行政のデジタル化を相当程度にまで実現していなかったならば、惨事の規模とそれに伴う万事の混乱は想像するのも困難です。

最近5年間に保健行政への資金投入は1兆ズウォティを超えましたが、それでもその質はポーランド人が期待している水準から離れています。これは、私たちの国で機能している、医療介護への資金調達システムが限度に達してしまったことの明確な信号です。再編成の哲学とはお別れすべきときが来ました。ポーランドを西洋諸国の水準に引き上げるような質の面での跳躍を行うには、行進のスピードを上げなくてはなりません――そのゴールは、国民総生産の7パーセントを保健にあてることです。

税制のポーランド的逆説

これは保健行政への資金投入モデルの変化、すなわち、税制度における変化を意味しています。これまでポーランドは、健康への分担金の一部を税金から控除できるたった一つの国でした。システム全体の構造により、最も多く稼いでいる人が、税金を最適化する、相対的に最も単純な可能性を持っています。ポーランドの税制度は名目上累進的ですが、de facto(実質的には)累減的になりました。収入がより低い人がより高い人よりも、割合として多くの税金を払っています。

税制のポーランド的無秩序は、公正さの感覚を弱め、社会的統一性の構築を不可能にしただけではありません。なによりも不平等を深化させることにつながり、危機的状況においてこうした現象は強まりました。

危機は、海の荒波に似ています。大船を揺らしますが、小舟にとっては沈没の脅威です。最新の調査がはっきりと示しているのは、パンデミックの年2020が収入の不平等を深化させたことです。最も富める者は危機と無縁に獲得し、最も貧しい者は困難な状況故に失ったのです。

ポーランドの真の連帯に向かって

ポーランド・ニューディールは、これらの挑戦状を提示します――それが本当の連帯精神から生まれたものだからですが、ここでの「連帯」はとても広い意味に理解されなくてはなりません。これは水平的次元における連帯、すなわち社会的公正、収入不平等の均等化、最も稼ぎの少ない人への支援への心配りです。この次元において私たちは、3万ズウォティ水準、すなわち西洋諸国と比較できる水準――フランスより高く、デンマークと肩を並べる水準――における、所得税免除を提案しました。しかしポーランド・ニューディールにおいて重要なのはまた、垂直の次元における連帯であり、これは世代間連帯を呼ぶことができます。一方においてこれは、過去の方に向き直ること、非課税年金という形での高齢者に対する物質的援助であり、それを抜きにしてポーランド社会とポーランド全体の未来が想像し難しい、貴重な財産へと向き直ることです。他方において、これは、未来の世代への心配りをし、私たちの子どもたちが、よりよく稼ぎ、よりよい条件下で働き、そして、last but not least(最後だが大事なことは)、正常な空気を吸うことができる環境で生活する、選ばれた人だけが手に入れられる、規制された何かとしてそれについて読むのではなく、生活することを可能にするような、発展の基礎を作り上げる力です。

2020年代初頭は、ポーランドにとって極めて重要なときです。私たちは、これまで出くわしたことのない文明的転換の入り口に立っています。これは歴史の成せる業ですが、これまでのこうした転換について、私たちは傍観者にしかなれませんでした。今は私たちが、こうした転換の主役になる好機です。シナリオはできています。一緒にポーランド・ニューディールを実現するだけで十分なのです。私たちはこれができるだけ大方から承認されるよう努力します――そうなって初めて、この種の戦略は成功と認められるからです。

マテウシュ・モラヴィェツキ

本テキストは、国家記銘院とポーランド国立銀行の共同プロジェクトの一環として、ポーランドの月刊オピニオン誌「最も重要なことのすべて」にも、同時掲載される。

翻訳:ポーランド広報文化センター

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